実際に近い将来に起こりそうな人間とAIの恋愛模様を描いたラブストーリーです。
妻を失った主人公の男性セオドアが、パソコンの人工知能OSであるサマンサと出会うところから物語が始まります。人工知能といってもほとんど人と変わらないくらい高いコミュニケーション能力があり、普段の生活をサマンサからサポートしてもらいながらコミュニケーションを取っていくうちに自然と主人公はサマンサに惹かれていきます。ですが彼女は実態のない人工知能です。セオドアはその事に苦悩しながらも、真っ直ぐに気持ちを表すうちにサマンサも彼を理解しようと、まるで人間のように振る舞って関係を深めていくといった内容です。
この作品と似たようなシチュエーションで、人間とコンピュータの友情や恋愛などを描いた作品は過去にもたくさんあったと思います。ですがこの映画はそれらにはないリアリティがあります。
今までのものはジャンルがヒューマンドラマだったとしても、車が空を飛んでいたり相手が完全にロボットだったりと近未来感が強すぎてSF作品の中で起こる非現実的な内容のものが多くいまいち感情移入しにくいものがほとんどでした。しかし「her/世界でひとつの彼女」ではOSに搭載されている人工知能ということで感情移入もしやすいです。
また、中年の男性がパソコンに恋をすると考えるとちょっとオタク色が強く感じますが、内容は非常に純愛で、主人公のセオドアもOSのサマンサもとても真っ直ぐで、特殊な二人の関係の心理描写がとても上手く描かれている作品です。